地下アイドルと呼ぶにはメジャー過ぎる、メジャーと呼ぶには地下過ぎる、そんな批評が彼女には付き纏う。だがこの素晴らしいライブを体感したら、そんな陳腐な指標はどうでもいいと言うほかはない。そんな痛快なライブだった。
霧島若歌はライブを知っている。自分の魅せ方や、観客が何を求めているかを知っている。だから観客は絶対的な安心感がある。完全に信頼できる。それゆえに霧島若歌1人のチカラをはるかに超えたライブを作り上げることができる。ライブ巧者たる所以である。
セトリの詳細はここでは述べない。とにかくあっという間に駆け抜けた。私はずっと笑顔だった。沸いて観客同士で衝突してもお互い痛くもないし怖くも不快でもない。そんな空間を彼女は作り出すことができる。こんなアーティストを、私は他に知らない。私が生涯出会ったアーティストのなかでも最高のライブパフォーマーの1人だと言っていいだろう。
演目について少し触れておこう。観客が彼女に期待する激しいロック曲が主軸だったが、本人の思い入れが強いバラード曲や某アニメ曲もうまく織り交ぜていた。某アニメ曲については霧島若歌個人のライブで歌うことは権利関係の解消が難しかったはずだが、彼女の人柄がそれを可能にしたようだ。関係者の大英断に感謝を表したい。
今回はバンドが神懸かり的に良かった。正直なところRaWのギタリストのリョータ氏については技術的な不安をずっと感じていた。しかし今回は意地を見せた。ミスらしいミスはひとつもなかった。バンマスは私が知らない演者だったが、おそらく彼の存在がバンドの演奏クオリティーを異次元なレベルに高めていたのだと思う。まさか生演奏でUNISONのシュガビタをやるとは!あの超高難易度曲を完璧にきっちりこなすバンドは最高にクールだった。霧島若歌のワンマンライブだからこそ集まったメンバーなのだろう。彼女への絶対的な信頼感が演者間にも存在していることが見てわかった。
私はスタンディングのライブは苦手だが、霧島若歌だけは別だ。彼女は別格なのだ。今回のバンドでツアー回ってくれないかな、とさえ思った。