堀江由衣 LIVE TOUR 2019 文学少女倶楽部 埼玉公演 2日目

感想

約5年ぶりの単独ライブ、約7年ぶりのライブツアー、約17年ぶりのバンド編成ライブ。
そんな久しぶりづくしだった堀江由衣4thツアー『文学少女倶楽部』。
ツアー全4公演のうち、大宮ソニックシティ大ホールで行われた2公演に参加してきたので、2日目のイベントページの感想欄に埼玉2公演を踏まえた総合的な感想を書いていくことにする。

まず、本題に入る前に、これを書いている私がどういう立場にあるのかを明かしておきたい。
ほっちゃんこと堀江由衣との出会いはかれこれ15年以上前の2004年までさかのぼる。きっかけはラジオ番組『堀江由衣の天使のたまご』であった。その後、4thアルバム『楽園』よりほっちゃんの曲を聴き始め、2011年のアニメロサマーライブで初めてほっちゃんのライブを見る。そして単独ライブ初参加は2012年の3rdツアー東京公演。2012年の後半にはファンクラブ「黒ネコ同盟」にも入会し、本格的にほっちゃんのライブに足を運ぶようになった。

ここ2~3年の間に私と出会ってくださった方々にとっては、私が堀江由衣ファンであるという事実はもしかすると知られていなかったところなのかもしれないけど、私にとって声優アーティスト楽曲の原体験は紛れもなく堀江由衣である。

ところで、堀江由衣といえば、ミュージカルのように構成された独特のライブが有名である。これらはライブのタイトルそのままに「めぐる冒険」と呼ばれているのだけど、ほっちゃんがアニメのような架空の世界を舞台に冒険を繰り広げるというものである。ストーリー展開に合わせたセットリストが組まれ、我々ファンは「劇団ほりえ」として、座長堀江由衣から求められるままに、時には「やまびこの妖精」を、時には「ライブのお客さん」を、時には「海賊団」を、時には「エコー女学院 or 青クマ学園の生徒」を演じてきたのであった。

また、この演出は、ほっちゃんいわく、「1stツアーでバンドメンバーとうまくやれなかった」ことから、カラオケ音源とバックダンサーだけでどうやって衣装チェンジ等の主役不在の場をもたせ、観客に楽しんでもらうにはどうすればいいのか、というところからスタートしているということであった。(例えばこのインタビューで https://natalie.mu/music/pp/horieyui05 「ギターソロが苦手」みたいな発言があったりする)

こんな背景ゆえに、それなりの期間ほっちゃんのライブに足を運んできた私は余計な心配をしてしまうのである。
バンド編成のライブで、しかもライブタイトルは「めぐる冒険」となっていないことから、これまでのお馴染みの構成から大きく変化することは明らか。今だから正直に言うと、変わってしまったほっちゃんのライブを自分がどこまで楽しめるのか不安があった。

しかし、それはまったくの杞憂であった。

公演開始とともに、木造校舎のそばに佇むほっちゃんの映像が流れ始める。
バンド「文学少女帯」とダンサー「踊っ娘倶楽部」のメンバーを演者として巻き込んだ、映画の予告編風の映像が幕間に流れる構成で、バンド編成のライブでありつつもストーリーを持たせる演出がされていたことに安堵する私。のちのエンドロールで判明するのだけど、この映像の脚本にはやはり諏訪さん(『堀江由衣の天使のたまご』などの構成作家)が関わっていたのであった。

映像で断片的に語られる(予告編風なのでわざと断片的にしており、その間は観客のみなさんで埋めてほしい、とのこと)ストーリーを軸に、春夏秋冬、四季を巡りながらライブは進んでいく。
バンドメンバーの構成はバンマスにギターのエンドウ.さん、ベースに目黒郁也さん、ドラムにSHiNさん、キーボードとマニピュレーターに松本ジュンさん、バイオリンに土屋雄作さん。

バイオリンが入る5人構成のバンドであったのはストリングスが多いほっちゃんには本当に大正解であった。
春パートで披露された『桜』でのバイオリンの演奏は本当に綺麗でかっこよくて、ギターやドラムも生音ならではの力強さとビート感があって、『桜』がここまでバンド映えする曲であったことにはっとさせられた。バイオリンはこの後も『朝顔』や『A Girl In Love』をはじめとして様々な場面での「見せ場」があった。

『A Girl In Love』は個人的にいろいろと語りたい曲。
楽器を持ってマーチングバンド風のダンスをするダンサーさんと、舞台に舞い散る落ち葉、どこか切ない雰囲気のあるメロディとの何もかもがきれいにかみ合って、とても心地よい気分になった。
MCで、キーボードの松本ジュンさんが、サビのコード進行が好きと話してて、バンドメンバーが曲のことを好きでいてくれているのもすごく嬉しかった。

バンドメンバーの演奏といえば『CHILDISH♡LOVE♡WORLD』をまさか生バンドで聴けるとは思ってもいなかった。
ドラムとキーボードが「運動会」になっているとMCで聞いたので、2日目のこの曲ではついついバンドメンバーの演奏を見てしまったのだけど、作曲の竜人くんも多分人間が演奏することは想定してなかったはずだし、実際めっちゃくちゃ忙しそうだった。でも、緻密に組み上げられた打ち込みの音源とは違う、生音ならではのわちゃわちゃした感じがこの曲にはぴったりだったし、この曲はもうぶっ壊れそうなくらいでいいような気がするのである。

思いつくままに書いていくので順番が前後するけども、「劇団ほりえ」である我々に求められるものもやはり今まで通りであった。
まずは昨今のアニメ声優ライブ界隈の事情を察してかなのか「近年まれにみるライブなので、前の人でステージが見えないときがあっても『2時間くらいあるからどっかしらで見えます』、隣の人とちょっとぶつかっちゃったりしても、『まあ近年まれにみるライブだからなー』と大目に見てほしい(要旨)」と「とはいえ前後左右の人には気づかいを(要旨)」と冗談を交えながらMCで話していたほっちゃん。

ライブマナーを巡っての論争は今に始まったばかりではないけども、twitterで負の感情ばかりが大きく拡散され、それに連動するように注意事項や規制事項が増えていくこの風潮に息苦しさを感じていた私なのだけど、思いやりと最低限のマナーをもって楽しみましょう、という内容を角が立たないように伝えてくれたほっちゃんはやっぱりすごいと思ったのだった。

んで、「やまびこ(コール)は隙あらば入れてほしい」「2日目でセットリストがわかっていても初めてのようなリアクションをしてほしい」と、ライブを盛り上げることに協力を求めるほっちゃん。
最近のライブでは「不適切な場所での無関係な大声」みたいな禁止事項が加わることが増えて、なんとなくモヤモヤしていた私だったのだけど、今回ほっちゃんのライブで「コールをどんどん入れろ」と言われて、そのモヤモヤの正体が「その禁止事項が本当に規制したい対象だけでなく、ライブ慣れしていない人たちの『自信が持てないコール』みたいなものまで潰しかねない」からだと明確に言語化できたような気がした。空気が読めないタイミングで大声を出すのは妨害だけど、楽しみたい、盛り上げたいっていう気持ちはそのまま表に出したほうがいいし、コールを知っている人は周りを巻き込む気持ちでどんどん声を出していくのがやっぱり楽しいのだ。

そして『キミイロ』では一曲まるまるフルでダンスをコピーするという課題が。
振りコピは楽しくて私自身好きなのだけど、ここ最近とかくトラブルになりがちな印象を持っていた私は現場によっては控えていたりしたのであった。
でもここはほっちゃん現場、私の周りは全力で振りコピする人たちばかり。『キミイロ』の振り付けは動作が大きいため、隣とぶつからないようにうまいことコンパクトにまとめつつコピーをするのは当然なのだけど、もし間違えてぶつかっちゃったとしても、そこはお互い様。それよりもライブを楽しもうぜ、と。

ルールばかりで縛るのではなく、排他的なお仕着せの一体感ではなくて、楽しみたいっていう単純で根源的な気持ちが生み出す一体感。それぞれの楽しみ方が違っても、楽しみたいっていう気持ちは同じ。
そしてそれをまとめあげる堀江由衣という存在の懐の深さを再認識したのであった。

本編終了後、アンコールでもったいぶるようなMCをつけつつ歌った『For フルーツバスケット』。
本編で四季をめぐり、冬を越えてまた新たな春がやってくる。
私の堀江由衣ファン歴が15年という話を最初に書いたけども、それは裏返すとほっちゃんもずいぶん長いこと活動してきているのであって、この『For フルーツバスケット』のカバーも18年前に発表されたもの。
アニメのテーマソングである以上そのストーリーを踏まえたものであるのは確かなのだけど、今このタイミングで聞くと、これまでの人生でいろいろあったことが思い出されるようで、そしてそれを踏まえてまた前に進まなくちゃいけないんだよ、ってメッセージが感じられて、妙にエモくなってしまったのであった。

まとまらないままにいろいろと書いてしまったけども、振り返ると実に様々な思いが溢れてきたよいライブだったように思う。あの日会場に集まった人たちはそれぞれみんな違う背景を持っている人たちだろうし、1公演だけ来た人、全通する人、デビュー当時からずっと現場で応援している人、人生で初めてほっちゃんのライブを見に来た人、いろいろいたと思う。
それでも、ステージ上のほっちゃん、文学少女帯の皆さん、踊っ娘倶楽部の皆さん、そして客席の「劇団ほりえ」みんながそれぞれに楽しんで笑顔になれたあの空間では、たとえその時だけだったとしてもみんなが一体になれたと思っているし、それは本当に素敵なことなんだと思う。

また、冒頭で書いた通り、今回のライブはほっちゃん本人の意向は強く反映された「めぐる冒険」とは異なる構成となっており、キングレコードの三嶋さんがプロデュースしたものであった。
「第三者がプロデュースしたフルバンドでの堀江由衣ライブ」は、それなりの期間ファンをやってきた私にとっても新鮮なものに思えたし、バンドならではの雰囲気でいろいろな曲が聞けた嬉しさが本当に大きかった。
そして、私がこの変化に少なからず不安を持っていたのと同じように、もしかするとほっちゃんも、この変化をお客さんがどう受け止めるのか不安だったのかもしれないな、と思うのであった。
いつも以上に「劇団ほりえ」への感謝の気持ちをほっちゃんがMCで口にしていた気がするのは、きっと気のせいではなくて、この変化を好意的に受け入れてくれたことへの感謝の気持ちが表れていたのかもしれないな、と思ってしまうのは私の「オタク特有の勘違い」であろうか。

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