黒崎真音 LIVE 2015 ~5th Anniversary~

感想

ー終わらない世界の中で 咲き乱れた最期の言葉よー
突如ステージに独り現れた黒崎真音は、テンポを落としリズムも崩してその歌詞を噛み締めながら紡ぎ出すようにアカペラで歌い上げた。その声は力強く、確かな意志と覚悟を感じた。サビの一節を歌い終わるとバンドが演奏を始め、鋭いギターリフとベースの重低音が空間を支配した。
舞浜アンフィシアター。円形の演劇用のステージとそれを取り囲むように配置された扇形の客席は、とても音響が良いと感じられた。四角い箱と比べるとこうも反射音が気にならないものかと感心した。
今日の真音は、声のコンディションも良く細かなトチリも一切ない完璧なパフォーマンスだった。1月の赤坂blitzの雪辱という気持ちもきっとあっただろうが、やはり5周年ライブということで終始並々ならぬ緊迫感を感じた。冒頭の「君と太陽が死んだ日」に続けて「Magic∞world」「楽園の翼」などアップテンポな曲を数曲披露。曲間のMCでは、これまでの歌手生活を振り返り、過去の苦難やそれを乗り越えるために力を与えてくれた関係者やファンへの感謝を繰り返し述べた。
ロック曲のパートがひと段落するとバンドメンバーが機材を残して一旦撤収。テクノ曲のパートはカラオケ音源で披露された。ダンサーが曲調によって数回入れ替わったが、4人から6人ほどの編成で舞台を盛り上げた。驚くのは、真音自身は歌いながらダンサーの振り付け、というかダンスそのものを、完全に踊っていたということだ。黒崎真音の楽曲は歌うだけでも相当な技術を要すると思うが、ダンスもダンサーとほぼ同じ激しい動きを披露していた。彼女のエンターテインメントを妥協せず遂行する根性にとても感服した。後半には人気曲「FRIDAY MIDNIGHT PARTY!!」「UNDER/SHAFT」と続け、テクノ曲パートの最後は「X-encounter」。飼い慣らされたファン達は従順に会場を紅く染め上げる。この曲の後にまたバンドがステージに戻り、数曲を披露するとムードは最高潮に達した。ところが本編最後はバラード曲。アコースティックギターとバンドサウンドが曲の世界観を引き立てていたものの、曲を終えると、すこし物足りなさを残したまま、真音とメンバーは舞台裏へ引き上げた。
当然、すかさず起きたアンコール。5分ほど煽ると、ステージにバンドメンバーが戻った。曲が始まると歓声が起きるが、違和感にざわつく聴衆。ステージに真音がいない。不意に歌声だけが聴こえてきた。その刹那、スポットライトが客席の一部を照らし出す。なんと客席中段の出入口付近から真音は登場した。そしてそのまま客席通路を歌いながら移動を始め、くまなく客席を廻った。なんという素晴らしいサプライズだろう。間近で真音を見ることができたファンは曲など頭に入らなかったに違いない。黒崎真音が、ファンを信頼しているという証拠を、身をもって示したのである。特に混乱やトラブルが起きることがなかったのは、彼女の人徳の為せる業だと思う。
実はサプライズはこれだけでは終わらない。続く「Our Life is Our Song」では、なんと客席が綺麗に虹色に色分けされてサイリウム点灯されたのである。無線制御などではなく、有志のファンが席順ごとにサイリウムをメモとともに配布していたのだ。真音を驚かせようと考えた有志の方々、その心意気に応えた会場のファン全員が、壮大な虹色の景色を作り出した。真音はちょっと驚いたような素振りを見せて「どうしたの?!」と反応したが、感極まることなくすぐに曲に集中し、中断することなく歌い切った。曲が終わると繰り返し会場のファンに感謝の気持ちを述べた。
ダブルアンコールでオーラスは当然「メモリーズラスト」。サビのほとんどを会場に歌わせるスタイルではあったが、最高潮に達していたファンは迷いなく声を張り上げた。笑顔が溢れる黒崎真音の5周年ライブは大団円で終了した。ライブは演者とファンが作り上げるもの、とはよく言うが、この高いレベルでそれを体現できたライブを、私は初めて観た気がする。演者同士の一体感は当然だが、さらに、ファン同士の一体感、演者とファンの信頼感、それらがすべて舞浜アンフィシアターに存在していた。私はこの近年稀に見る心地良いライブを体験できたことを誇りにすら思う。

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