wakaparty-2012-

感想一覧(1)

  • a1f0n5

    「キチる」とはこれのことか、と初めて理解できた。霧島若歌の歌声は、完全にオーディエンスをコントロールしていた。そしてオーディエンスのエネルギーを完全に彼女は真正面から受け止めていた。まるで永久機関。会場にエネルギーが常に満ちて、彼女の歌声はいままで聴いたことのないくらいクリアでパワフルだった。いつでも全身全霊、命を削りながら燃え尽きるかのように歌う彼女の歌唱スタイルは、諸刃の剣。常に危うさと儚さを秘めている。しかし、この日はそんなことを微塵も感じさせなかった。生誕ライブ、それは1年で1度の特別な日。彼女がこの日に照準を合わせてきたのはすぐに理解できた。私は間違いなく最高の霧島若歌を観た、聴いた。オーディエンスは皆、笑顔でライブを楽しんでいた。私も理性を忘れるほど楽しんだ。しかし、おそらく彼女自身が誰よりも楽しんでいたのかもしれない。
    彼女は自分の得意とするパフォーマンスを完全に出し切っていたが、一方で、彼女は挑戦もした。衣装を変えて望んだのは、スローテンポで壮大なバラード。興奮の坩堝だった会場は水を打ったように静まり返った。その中で彼女は全身を使って楽曲を表現した。誰でもたやすくできることではない。スピードやテンポに頼らず、シンガーとしてのパーソナリティと歌唱力だけでオーディエンスの感性に勝負を挑んだのだ。歌の途中で彼女は崩れ落ち、跪き、その細い手首と指先が虚空を裂いた。圧倒的な哀しみと慈愛が空間を支配した。私は泣いていた。その声とその演出は見事に楽曲の壮大な世界観を体現していた。まるで演劇かオペラを観ているかのような感覚だった。
    とてつもなく多くの人に愛される霧島若歌、そしてそれに見合うだけの渾身のパフォーマンスをしっかりと返した霧島若歌。ただの生誕ライブのお祝いムードだけでは終わらない、霧島若歌が無尽蔵な魅力を持っている実力派シンガーであることを世に知らしめることができたライブだった。

    パーマリンク  4431日前

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